「自分で選ぶ」を、大人が先に決めないために
「青と赤、どっちがいい?」と聞いたつもりが、いつのまにかこちらが決めていることがあります。一日の中に、その子が自分で決めた場面がいくつあったかを数えてみます。
「どっちがいい?」と聞いたあとで
朝、子どもに服を選ばせようとします。「青と赤、どっちがいい?」
子どもが黙っています。時計を見ます。もう一度聞きます。まだ黙っています。三度目に、こう言ってしまう。「じゃあ青ね。青がいいよね」
こういう朝は、あります。仕事の時間があり、電車の時間があり、こちらにも限界があります。
ただ、この朝に何が起きたのかを、あとから静かに見てみると、選択肢を示したところまでは選ばせていて、待つところで終わってしまった、という形になっています。選ぶことは、決めることと、決めるまでの時間の両方でできています。片方だけを渡すと、選んだことにはなりにくいのだと思います。
「主体性」という言葉を、数えられる形にする
主体性や自己決定という言葉は、幼児教育の話でよく出てきます。ただ、この言葉は「主体性のある子に育てる」という形で使われやすく、そうすると目標は大人の側に立ちます。
もう少し数えられる形にすると、こうなります。
今日一日で、その子が自分で決めた場面はいくつあったか。
服でも、おやつでも、どの遊びをするかでも、公園から帰る時間を「あと一回すべり台」と決めることでもかまいません。数えてみると、思っていたより少ないことがあります。多くの選択が、こちらの段取りの中で先に決まっているからです。
「小さな一手」と「信じて待つ」
わ碁ころ幼稚園では、子どもが自分なりに選んだ行動や、もう一度試そうとする気持ちを「小さな一手」と呼んでいます。囲碁で一手を選ぶことを、日常の選択に重ねた言い方です。
そして、子どもが気づき、考え、言葉にする時間を、大人が関わりながら守ることを「信じて待つ」と呼んでいます。放っておくことではありません。そばにいて、先に答えを置かないでいる、ということです。
黙っている数秒は、何も起きていない時間ではなく、選んでいる時間かもしれません。
待てる場面と、待てない場面
一日の中に選ぶ場面を増やすには、たとえば次のような方法があります。
- 選択肢を二つに絞る。三つ以上あると、選ぶより迷うことのほうが大きくなることがあります。
- 待てる場面と待てない場面を、先に分けておく。朝の服は待てないけれど、夕方のおやつは待てる、という分け方でかまいません。
- 決められなかったときに「決められなかったね」で終える。決めさせるまで粘らない。
- こちらが決めたときは、決めたと言う。「時間だから、今日は青にするね」
最後のひとつは、ごまかさないための言い方です。選ばせるふりをして決めるより、決めたことを伝えるほうが、子どもには分かりやすいと思います。
今日、その子が自分で決めた場面は、いくつありましたか
数が少なくても、その日が悪い日だったわけではありません。数えてみると、明日ひとつ増やせそうな場面が見つかることがあります。それだけで十分だと思います。
