できたのたねをおしえて

口笛をまねしようとして、てのひらのアサガオのたねを、ぜんぶ飛ばしてしまった男の子。「できたのたね、おしえて」とたのまれて、聞きこみをはじめた女の子。そして、口笛をふけないお母さんと、こまったときに、へたっぴな口笛をふいているお母さん。「できたのたね」がどこにあったのかを、みんなでさがすお話です。

一 たねが、とんでいった朝

「ののかちゃん、できたのたね、おしえて」

そうたくんがそう言ったのは、十月のよく晴れた朝のことでした。

その日、わたしたちは、わ碁ころ幼稚園のフェンスの前にしゃがんで、アサガオのたねをとっていました。夏のあいだ、子どもたちが毎朝水をやって育てたアサガオです。いまはもう、つるも葉っぱもすっかり茶色くなって、紙のように乾いた小さな実があちこちにぶら下がっています。

実を指でつまむと、かさっ、と割れて、中から黒いたねが出てきます。みかんのひと房をうんと小さくしたような形です。とったたねは、ひとりひとつずつ小さな封筒に入れて、おうちに持ち帰ることになっていました。

「このたねの中にはね、来年のアサガオが、ぜんぶ入ってるんだよ」

わたしが言うと、年中のそうたくんは、てのひらのたねに顔を近づけました。

「ぜんぶ? はっぱも?」

「はっぱも」

「つるも?」

「つるも」

「むらさきも?」

「むらさきも」

そうたくんは、しばらく黙って、それから「せまそう」と言いました。

たしかに、せまそうです。

「でもね、土にまいておくと、みんながねているあいだに、いつのまにか芽が出てくるんだよ」

そう話していたとき、フェンスのいちばん向こうのはしから、細くて高い音が聞こえてきました。

年長の、ののかちゃんでした。

ののかちゃんは、たねを一つぶずつ数えながら、封筒に入れているところでした。お当番でもないのに、とてもていねいに。そして、その口から口笛が流れていたのです。

曲は、たぶん「ちょうちょう」でした。たぶん、というのは、途中からいつのまにか「かえるのうた」になっていたからです。本人は、気づいていないようでした。

そうたくんは、たねをのせたてのひらを差し出したまま、固まっていました。

「ののかちゃん、いまの、なに」

「くちぶえ」

「ぼくも、やる」

そうたくんは、くちびるをきゅっとすぼめて、思いきり息を吐きました。

ふしゅーーー。

音は、出ませんでした。

かわりに、てのひらのたねが、ぜんぶ飛んでいきました。

「まゆせんせい、そうたくん、またこぼしてるよ〜」

フェンスのはしから、ののかちゃんの声がしました。

それから五分ほど、わたしたちはみんなで草の中に四つんばいになって、黒いつぶをさがしました。来年のアサガオが、ぜんぶ入っているたねです。見つかったのは、半分くらいでした。残りの半分は、来年の夏、思いもよらない場所で咲くのかもしれません。

たねさがしが一段落すると、そうたくんはののかちゃんに聞きました。

「どうやったら、ふけるの?」

「わかんない。いつのまにか、できたの」

そうたくんは、草の中から拾いなおしたたねをじっと見ました。そして、とても大事なことに気づいた顔になりました。

「いつのまにかって、たねでしょ」

さっきのわたしの話を、ちゃんと聞いていたのです。

「じゃあ、ののかちゃんのくちぶえにも、たね、あるでしょ。できたのたね、おしえて!」

できたのたね。

日本語としては、少し変わっています。でも、言いたいことは、ふしぎなくらいよくわかりました。

ののかちゃんは、背すじをのばして「いいよ」と言いました。

そして、ひと呼吸おいてから、小さな声でつけ足しました。

「……ちょっと、まってて」

どうやら、自分でもどこにあるのか知らなかったようです。

二 ののかちゃんの、聞きこみ

さっそく、ののかちゃんの聞きこみがはじまりました。

最初に聞かれたのは、わたしです。

「まゆせんせいは、くちぶえ、どうやってできるようになったの?」

ここで、ひとつ白状しなければなりません。わたしの口笛は、なぜか、息を吸うときにしか鳴らないのです。吸うと、ひゅう。吐くと、何も鳴りません。子どものころから、ずっとそうです。

やってみせると、ののかちゃんは、わたしの顔をじっと見て言いました。

「それ、すってる」

「すってます」

「はくほうは?」

「できません」

ののかちゃんは、ふむ、とうなずいて、探偵が手帳に何か書きつけるような顔で言いました。

「せんせいのは、はんぶんだね」

はんぶんです。

となりでは、そうたくんがさっそく吸う口笛を試して、思いきりむせていました。

お迎えの時間になると、ののかちゃんは門の前でおうちの人を待ちかまえていました。

先に来たのは、ののかちゃんのお母さんの、ゆうこさんです。家でウェブデザインの仕事をしているゆうこさんは、その日も前髪をクリップでとめたまま、自転車で駆けつけてきました。

「せんせい、また何かやらかしてませんでした?」

ゆうこさんは、笑いながら言いました。毎日これを聞くのです。そして、ののかちゃんが何かをやらかしたことは、ほとんどありません。

「やらかしたというか……いま、調査中です」

「調査?」

ののかちゃんが、ゆうこさんの前に立ちました。

「ママ、わたし、くちぶえ、どうやってできるようになった?」

ゆうこさんは「え?」と言って、空を見上げて、首をかしげて、それから、わたしのほうを見ました。

「……うちの子って、天才じゃないですか?」

本気の顔でした。

ののかちゃんは、首を横にふりました。

「てんさいは、たねじゃない」

少しあとから、そうたくんのお母さんの、まきさんが来ました。クリニックの受付の仕事から、急いで来たのでしょう。胸もとに名札をつけたままでした。

前髪のクリップと、胸の名札。ふたりとも、仕事のつづきを一つずつ身につけたまま、門の前に並んでいました。

ののかちゃんは、まきさんにも同じことを聞きました。

「そうたくんのママは、くちぶえ、どうやってできるようになった?」

まきさんは、ののかちゃんの目の高さにしゃがみました。

「ごめんね。ふけないの」

「おとななのに?」

「おとななのに」

「わたしも、はくほうは、できません」

言ったのは、わたしです。なぜか、手まであげていました。

まきさんは、くすっと笑いました。

帰りぎわ、まきさんは、少しだけ声を落として言いました。

「三十五年、ふけないまま来てしまいました。……そうたに、教えてあげられたらいいんですけど」

ののかちゃんは、聞きこみの結果を、こうまとめました。

「せんせいは、はんぶん。ママは、てんさい。そうたくんのママは、ふけない」

たねは、まだ見つかりません。

三 ふしゅー

それからの数日、園のあちこちで、ふしゅー、という音がしていました。

そうたくんです。

積み木を積みながら、ふしゅー。手を洗いながら、ふしゅー。すべり台のてっぺんで、ふしゅー。

口笛を練習するときのそうたくんは、くちびるをひよこのくちばしみたいにすぼめて、なぜか、両目がまんなかに寄ります。その顔を見て、まわりの子が笑います。笑われたそうたくんは、怒るどころか、うれしそうに聞きます。

「いま、へんなかお、してた?」

「してた」

「やった」

変な顔なら、そうたくんは、もう名人です。

ののかちゃんは、そのそばで先生のように教えていました。

「したは、ここ。くちは、ストローくらい」

「ストロー、どこ?」

「ストローくらいの、おおきさ!」

ふしゅー。

「ちがう。もっと、ちいさく」

ふしゅっ。

「ちいさすぎ」

ののかちゃんの説明は、とても正確でした。でも、口笛には、説明できるところとできないところがあるようです。最後には、ののかちゃんがお手本をふいて、そうたくんは、その口もとを十センチくらいのところから、ただじっと見ていました。

一度、そうたくんが大きな声でわたしを呼びました。

「まゆせんせー! きいてー! いま、なった!」

駆けつけると、園庭のケヤキの枝で、ヒヨドリが、ぴいっ、と鳴いていました。

そうたくんは、ヒヨドリをしばらく見上げてから、言いました。

「……あのこ、じょうず」

それから、くやしがるどころか、また、ふしゅー、とやっていました。どこか、たのしそうに。

水曜日の朝、まきさんが門の前で言いました。

「そうたが、こんなこと言ってて……ちょっと驚きました」

前の晩、寝る前のことだそうです。そうたくんは、ふとんの中でも、ふしゅー、ふしゅー、と練習していました。そこで、まきさんは、つい言ってしまったのだそうです。

「夜に口笛をふくと、へびが来るよ」

そうたくんの目は、かがやきました。

「へび、くるの!?」

そこからの練習は、それまでの倍の熱心さだったそうです。けれど、へびは来ませんでした。そうたくんは、天井を見上げて、残念そうに言いました。

「ぼくが、まだ、ふけないからだ」

それから、まきさんのほうを向いて、こう続けたそうです。

「ふけるようになったら、へび、よぼうね」

「ママ、へび、きらい」

「じゃあ、ママがねてから、ふく」

まきさんは、そこまで話すと、まじめな顔のまま、もう一度言いました。

「……ちょっと、驚きました」

わたしは、こらえきれずに笑ってしまいました。まきさんも、最後には笑っていました。

「へびのこと、言ってから、自分でびっくりしたんです。わたしの母が言っていたのと、まったく同じ言い方で。声まで、そっくりで」

それから、まきさんは、少しだけ声を小さくしました。

「じつは、わたしも、練習してるんです」

家では、そうたくんと並んで。通勤の電車では、マスクの下で、こっそり。

「でも、マスクが、ふくらんだり、しぼんだりしていたみたいで。向かいの席の小学生に、ずっと見られていました」

降りる駅が近づくころには、その小学生も、マスクの下で何かを始めていたような気がする、と、まきさんは言いました。

四 ぬけた歯

金曜日の給食のあとのことです。

「まゆせんせい。ぬけました」

ののかちゃんが、てのひらに小さな白いものをのせて、わたしの前に立っていました。

下の前歯でした。何日も前から、ぐらぐらしていた歯です。給食のりんごをかじったら、ころん、と取れたのだそうです。

ののかちゃんの声は、お当番の報告をするときと、まったく同じ落ちつきでした。泣いてもいないし、あわててもいません。むしろ、少し誇らしげでした。

子どもたちが、わっと集まってきました。

「みせて!」

「ちっちゃい!」

「いたかった?」

「ぜんぜん」

わたしは、まだ使っていない、たね用の封筒を一つ持ってきて、歯をそっと入れました。ちょうどいい大きさだったのです。

それから、ののかちゃんは、台ふきんでテーブルをきれいにしはじめました。お当番の仕事のつづきです。そして、いつものように、口笛をふこうとしました。

ふしゅー。

ののかちゃんの手が、止まりました。

もう一度。

ふしゅー。

音が、出ません。歯がぬけてから、はじめての口笛でした。

ののかちゃんの顔から、すうっと、いつもの落ちつきが消えていきました。

そこへ、そうたくんが、顔をかがやかせて飛んできました。

「なかまだ!」

「なかまじゃない!」

ののかちゃんの声は、いつもより、ちょっと大きめでした。

そうたくんは、わたしのところへ来て、小さな声で言いました。

「ののかちゃんに、おこられた……」

それから、しばらく封筒をじっと見ていたかと思うと、急に、ひらめいた顔になりました。

「わかった!」

そして、ののかちゃんのところへ走っていって、封筒を指さしました。

「ののかちゃんの、できたのたね、それだったんだよ」

「……え?」

「だから、ぬけたら、ふけなくなったんだよ。それ、うえたら、くちぶえの木が、はえてくるよ」

くちぶえの木。

大人として、ここで何か、正しいことを言うべきだったのかもしれません。でも、わたしは正直なところ、くちぶえの木というものを、ちょっと見てみたいと思ってしまいました。

ののかちゃんは、封筒を両手で持って、しばらく考えていました。それから、まじめな顔で言いました。

「……ママに、そうだんする」

五 へたっぴな口笛

お迎えの時間、ゆうこさんが門に着くなり、ののかちゃんは封筒を差し出しました。

「ママ、はが、ぬけた」

「えーっ! ぬけたの!? 見せて見せて!」

ゆうこさんは、封筒をのぞきこんで「ちっちゃ!」と言い、それから、ののかちゃんの口の中をのぞきこんで、もう一度「ちっちゃ!」と言いました。どちらも、ちっちゃいのです。

「これ、うえる」

「うえる?」

ののかちゃんは、そうたくんの説をそのまま説明しました。くちぶえの木の話です。ゆうこさんは、真剣に聞いていました。

「でもさ、歯って、屋根に投げるんじゃなかったっけ。下の歯は屋根の上で、上の歯は縁の下……だったよね?」

ゆうこさんが、わたしを見ました。

「たしか、そうです」

「うち、マンションの七階なんだよね。屋根も、縁の下も、ないんだよね」

ゆうこさんは、腕を組んで考えはじめました。そして、考えながら、口笛をふきはじめました。

ぴゅう、ひゅるる、ぴ。

曲は、わかりませんでした。たぶん、ゆうこさん本人にも、わかっていません。音は、あちこちに自由に散らばっていました。

そのとき、ののかちゃんが、はっとした顔でゆうこさんを見上げました。

「ママ、いま、ふいてた」

「え? ふいてた?」

「ふいてた。ママね、こまったとき、ふくの」

ゆうこさんは、目をまるくしました。

「うそ。わたし、ふいてる?」

「ふいてるよ。パソコンのまえで、うーんってなったとき、いつも、ふいてるよ」

ゆうこさんは、一瞬黙って、それから、わたしのほうを見て、苦笑いしました。

「……うーんってなるの、ほぼ毎日なんですけど」

ののかちゃんは、そこで、大事なことを思い出したような顔をしました。

「わたしのくちぶえ、ママのまねなの」

ゆうこさんが仕事をしている部屋の、少しだけ開いたドアの向こうから、いつも、へんな口笛が聞こえてくる。へたっぴなのに、なんだか、たのしそう。それで、まねをしているうちに、いつのまにか、ふけるようになった。

ののかちゃんの話をつなぎあわせると、そういうことのようでした。

「へたっぴ……」

ゆうこさんは、そこにだけ、少し傷ついていました。

「ののかちゃんは、よく気がつくね」

わたしが言うと、ののかちゃんは、少しだけ得意そうな顔をしました。

ちょうどそこへ、名札をつけたままのまきさんが着きました。ののかちゃんは、くるりと向きを変えて、門のそばにいたそうたくんの前に立ちました。

「そうたくん。できたのたね、わかった」

「どこ?」

「もう、あげたよ」

そうたくんは、きょとんとしました。

「わたし、まいにち、ふいてたでしょ。そうたくん、いいなあって、いったでしょ」

そして、胸をはって、つけ足しました。

「わたし、ぜんぶ見てたもん」

そうたくんは、自分の両手を見て、それから、自分のおなかを見ました。

「……どこから、はいったの」

ののかちゃんは、少し考えてから、答えました。

「みみ」

そうたくんは、なるほど、という顔をしました。それから、右の耳をののかちゃんのほうへ向けました。

「じゃあ、もうちょっと、いれて」

ののかちゃんは、そうたくんの耳に口を近づけて、ふきました。

ふしゅー。

やっぱり、息の音だけでした。

「くすぐったい!」

そうたくんは、耳をおさえて、笑いころげました。

ゆうこさんが、ののかちゃんに聞きました。

「で、歯は、どうする?」

「うえる。いちおう」

いちおう、だそうです。

「乳歯ケース、もう買ってあったんだけどなあ。……ま、元気ならいいか!」

なにが元気なのかは、よくわかりませんでした。

まきさんは、まだ笑っているそうたくんの手をひいて、帰っていきました。

六 ぴ

週明けの月曜日、ゆうこさんがスマートフォンの写真を見せてくれました。

ベランダに、小さな植木鉢がひとつ。土の上に、アイスの棒が一本、立っています。棒には、ののかちゃんの字で、こう書いてありました。

くちぶえのき

「やっぱり、うちの子って、天才じゃないですか?」

ゆうこさんは、本気の顔で言いました。わたしは、その字をしばらく見ていました。最後の「き」が、ほんの少し、木のかたちに見えました。

そこへ、そうたくんが、門の向こうから走ってきました。

「まゆせんせー! きいてー! ぴって、なった!」

「それはすごいねぇ……!」

今度は、ヒヨドリではありませんでした。

うしろから来たまきさんが、話してくれました。

日曜日の夜のことです。ふとんの中で、そうたくんとまきさんは、ならんで練習していたそうです。ふしゅー、ふしゅー。親子で、ふしゅー。

そのとき、そうたくんの口から、ほんの小さな音が出ました。

ぴ。

ふたりとも、動きが止まりました。

一秒後、そうたくんは「へび、くる!」と叫んで、ふとんの中にもぐりこみました。

へびは、来ませんでした。

しばらくして、ふとんから顔を出したそうたくんは、通園かばんのところへ走っていって、何かを持って戻ってきました。

アサガオのたねの封筒でした。

そうたくんは、封筒から一つぶ、たねを出して、まきさんのてのひらにのせました。

「ママに、あげる。できたのたね」

「……ママに?」

「ママは、まだ、ふけないから」

まきさんは、そこまで話して、少し黙りました。

「教えてあげられたらいいなって、ずっと思ってたんです」

まきさんは、自分のてのひらを見つめたまま、少し笑いました。

「まさか、わたしのほうが、たねをもらうなんて」

わたしは、そうたくんのそばにしゃがんで、聞いてみました。

「ママと、ならんで、ふしゅーってしてたんだね。そうたくん、それって、どんな気持ちだったの?」

そうたくんは、少し考えて、言いました。

「ママ、ずっと、ふしゅーだったの」

「うん」

「ママもできないから、ぼく、できなくても、へいきだった」

それから、少し鼻をふくらませて、つけ足しました。

「でも、ぼくのほうが、さきにできた」

まきさんは、笑いながら、くちびるをすぼめました。

ふしゅー。

まだ、鳴りませんでした。

その日から、まきさんの名札のうしろには、アサガオのたねが一つぶ、入っているそうです。春になったら、まくのだと言っていました。そのころ、まきさんの口笛がどうなっているかは、まだわかりません。

七 こぼれたたね

できたのたねは、どこにあるのでしょう。

ののかちゃんのたねは、ドアの向こうから聞こえてくる、お母さんのへたっぴな口笛でした。そうたくんのたねは、ののかちゃんの口笛。そして、そのたねが芽を出すまで、となりには、一緒にふしゅー、とやってくれる、ふけないお母さんがいました。

だれも、たねをまこうとしていたわけではありません。へたっぴな口笛からも、ふけない人の、ふしゅー、からも、たねは、いつのまにか、こぼれていたのです。

そういえば、「ぴ」が鳴ったのも、日曜日の夜の、ふとんの中でした。たねというのは、みんなが休んでいるあいだに、芽を出すものなのかもしれません。

さいごに、ご報告です。

ののかちゃんの歯は、まだ生えてきていません。くちぶえの木も、まだ、芽を出していません。

それでも、わ碁ころ幼稚園では、今日もあちこちで、ふしゅー、という音がしています。いまは、その中に、歯のぬけたののかちゃんの、ふしゅー、もまじっています。

ときどき、ぴ、とも鳴ります。どちらの、ぴ、なのかは、わかりません。

へびは、まだ、一度も来ていません。

※この作品に登場する「わ碁ころ幼稚園」と人物・出来事は、わ碁ころ幼稚園の教育観をお伝えするための創作です。実在の施設・人物ではありません。